2003年04月11日
第14、15回口答弁論報告（被告側証人に対する反対尋問）
第14、15回口答弁論報告（被告側証人に対する反対尋問）
去る２月２８日、４月１１日の両日に亘って、被告側証人７人の反対尋問が行われました。
被告側代理人は、異議を連発し、時には、証人が何も言っていないのに、「質問の意味が分らない」等、証人に代って証言することさえ見られました。
しかし、今回の反対尋問で、被告側証人の証言のデタラメさが改めて浮き彫りにされました。
１ Ｋ保護者会長・理事に対する反対尋問
� ／邑⊃�害を一部認める！
今回のＫさん反対尋問で一番大きな点は、Ｋ証人が、Ｋ．Ｍ元職員の利用者に対する虐待について「聞いたことがある」とし、又、被告施設長は止むを得ないとしていた利用者がトイレ便器のたまり水を飲用し、口の周りを大便で汚している件についても「療育のミス」と証言し、被告施設における人権侵害を一部認めた証言でした。
その為、被告代理人は、再主尋問で、聖母の家において「完全無欠な療育とは思っておらず、不満もある。」と証言させていましたが、原告らの具体的な人権侵害事実の指摘に対して被告側証人も認めざるを得ませんでした。
�◆（欷郤垳�け寄付要請は法人の肩代わりであることが明らかに！
Ｋ証人は、寄付金を強要したとされた問題については、自らの責任で寄付を要請したと証言しながら、「寄付された総額は聞いていない」という証言、「（会計報告について）ちょっとまだやっていません、そう言えば」との証言、領収書は寄付の要請者ではなく、被告職員であること等、今回の寄付が自らの責任というより他人事である証言に終始しました。Ｋ証人は名嶋弁護士に「（寄付要請に関して）Ｋ氏が実行したのは要望書を出したこと以外何かあるのか」と、問われると何も答えられませんでした。
今回の寄付強要は、寄付強要を禁止されている被告法人に代って行ったことが白日の下にさらされ、本来法人のチェックする機能が要請されている保護者会が逆の機能を果たしている事が改めて明らかになりました。
２ Ｅ．Ｓ元職員に対する反対尋問
Ｍ元職員自殺に関する証言について根拠がないことが明らかに
被告側証人７人の内、Ｅ証人を含む４人がＭ元職員の自殺について原告らと関連があるとの主尋問における証言について、Ｅ証人に集中して反対尋問が行われました。
Ｅ証人は、１０年以上も前に退職したＭ職員の自殺については、Ｙ控訴審裁判でも証言していますが、その時は、「関連性がない」と証言していたのです。その上、Ｍ職員が、自殺する前に、営業職で愛知県・静岡県境の新城市に単身赴任していたこと、その後、転職したが仕事上、経済上の悩みを持っていたこと、Ｍ職員の自宅近くのＹ元職員宅に録音テープを隠し取りをしていたことでトラブルを引き起こしていた事等、Ｅ証人も認める事実があったのです。
更に、今回Ｍ職員が受診していた病院に弁護士照会した結果、慢性肝炎に罹患していたこと、慢性肝炎の薬には、鬱症状が生じる副作用もあること等についても明らかになりました。
これらのことについては一切問題にしないで、１０年以上も前に退職したことだけで、「関連性あり」と証言しているに過ぎないことが明らかになりました。
３ Ｍ元職員に対する反対尋問
Ｍ証言は根拠ないレッテル貼りに過ぎないことが明らかに
Ｍ証人は主尋問で、「（食事指導において）手づかみでもいいんだ、スプーンを持つことは差別と、（原告らに）日常的に言われる。」「利用者の指導について方針や会議がなかった。」等、「原告らは、指導を放棄し放任主義。」であったとの証言をしました。
しかし、名嶋弁護士が、Ｍ証人が以前勤めていた鈴鹿和順学園でＡ型肝炎が発症し、２名の死者を出したことを例に、原告らがＡ型肝炎発症という状況において放置していた例について証言を迫ると、答えに窮してしまいました。又、「手づかみでもいいんだ」とする証言に対して、Ｍ証人が就職する以前に、手づかみで食べなくていいようにすくい易い食器を会議決定で採用された特別な食器、その食器の導入を決めた会議録、原告が、利用者の食事指導について発表した「軌跡」（聖母の家研究発表誌）を示しましたが、Ｍ証人の証言はただただ証言を維持しているという感じで、説得力に欠けました。
４ Ｗ元職員に対する反対尋問
Ｗ証言は矛盾に満ち、無責任なものであったことが明らかに
Ｗ証人は、主尋問、陳述書において「原告一派は、89年以降、集団で他職員に非難･排除し、」「その契機となったのは、Ｙ主任補佐着任(87年)その降格(88年)であった。」と証言しました。
名嶋弁護士が、その「契機」とされた以降に発行され、見るからに職員関係がうまくいっている89年発行の「あゆみ寮たより」を示し、Ｗ証言の矛盾を問い質すと、Ｗ証人は、「随分前のことで」「記憶に誤差が出るかも知れないが」と証言し、Ｗ証言が全くの嘘の証言か思い込みに過ぎないことが明らかになりました。
又、名嶋弁護士が、「（原告らが）療育に対して無責任であった」とのＷ証言について、Ｗ証人に対して、逆に寮で決まったことを守らなかったことを、Ｗ証人自ら記述した健康ノートを示し、追及すると、Ｗ証人は、守っていなかったことを認めざるを得ませんでした。そして、Ｗ証人は、寮で決定されたことを守らなかったため、利用者にゴム手袋を異食されたことがあったのではないかと名嶋弁護士に指摘されると、証言に窮してしまい、「療育に対して無責任であった」のは、Ｗ証人であったことが白日の下に曝されてしまいました。
５ Ｋ証人の証言
Ｋ証言が単なる思い込みに過ぎない事が明らかに
Ｋ証人は主尋問において原告の解雇事由であるセクハラ怪文書事件についてのみ証言しました。
被告は、セクハラ怪文書事件について、原告が関与していたとする唯一とも言える根拠がＫ上申書・陳述書でした。ところが、その上申書･陳述書において、被告がセクハラ怪文書作成者が原告である根拠とされる「事実」について、大きな齟齬がありました。
つまり、上申書においては、原告が現代表理事のセクハラについてＫ証人に対して、「問題にすることは如何か」と発言したとされていました。ところが後日に出された陳述書においては「あの文書を出すべきかどうか」の相談があったと、原告犯人説により近づいた陳述に変遷しているのです。
その違いについて、名嶋弁護士が追及すると、Ｋ証人は混乱し、今までの主張と時期的にも全く違うという証言を行い、Ｋ証言の曖昧さが浮きぼりになるだけでなく、上申書･陳述書に信用性がないことが明らかになりました。
又、Ｋ証人は、このセクハラ怪文書について原告らが三重県庁でまいたということを聞いたと、今まで被告が一度も主張したこともないことについて証言しました。三重県庁というような場所でまいたとするなら、誰がまいたかは明らかであり、そもそもこのセクハラ怪文書事件は１０年も前のことで、このことが今まで表面化せずに、突然出てくるというのもおかしな話です。Ｋ証言が全く根拠のないものであることは、この証言で却って裏付けられたと言えます。
６ 現施設長に対する反対尋問
現施設長証言のデタラメさが次から次に明らかに！
被告は聖母の家において発生した「Ａ型肝炎惹起･拡大」の責任が原告にあるとして、原告の懲戒解雇事由としてきました。それに伴い、現施設長を証人に立て、同証人は、「加藤の責任は当然やるべき事をやらなかったという理解である。」と証言してきました。
それに対して名嶋弁護士は、Ａ型肝炎の客観的資料を基に、追及すると、惹起責任ではなく、拡大責任であると、証言を後退させました。
又、被告は、最初の罹患者の異変を記録した学園連絡帳を見逃したことが、原告のミスであると主張していました。しかし、この「異変」自体について、学園記録者であった現施設長（当時は学園職員）自身、それ程問題だと思っていなかったことは明らかでした。それは、同じ学園連絡帳には「健康状態」という欄があり、そこに｢良｣と記録していたことでした。
その点を名嶋弁護士が追及すると、「『良』としたのは,間違いであり、余り意識していなかったかもしれない。」「この欄だけ見れば、原告らが問題ないと理解してもおかしくない。」と、証言せざるを得ませんでした。更に当時原告らがＡ型肝炎発生時における対応についての客観的資料を示すと、その文書について見た事もないと証言し、Ａ型肝炎終結にあたって「原告らに特別手当が支給されたことは聞いたことあり。」とする証言と併せると、この件が解雇の根拠とする「当然やるべき事をやらなかったという理解である。」とする証言が、根拠のない嘘であったことが白日の下に曝されたと言えると思います。
又、現施設長は、原告一派の療育の捉え方に問題があるとして、その根拠として原告を支援する職員の勤務していたあゆみ女子棟利用者は、医者から半数が肥満、残る半数も肥満予備軍との指摘があり、調査した結果、不適切な対応があった、と主尋問で証言していました。この点についても全くの嘘であることが明らかになりました。
あゆみ女子棟利用者の身長と体重のデーターを基に、ＷＨＯでも使っているＢＭＩ指数（肥満度）で表にすると、肥満クラス１１％、肥満前段階２１％、正常３６％、低体重３２％という結果で、肥満クラスと肥満前段階を合わせても３分の１弱でした。この点について名嶋弁護士が追及すると、「看護婦から聞いた」と、看護婦に責任を押し付けましたが、現施設長の明らかな嘘がここでも明らかになりました。
更に現施設長は、原告が被告施設における人権侵害年表について、「人権侵害はなかったと思っているが、仮にあるとすれば、会議で問題にすべきであるが、この年表には一切触れられておらず、無意味である。」と証言していました。ところが、この人権侵害年表においては、原告らが会議等で問題にしたことが具体的に記録されており、現施設長が平然と嘘をつくことがこのことからも明らかになりました。
７ 現代表理事に対する反対尋問
「分らない」を連発する無責任な証言に終始
最後は本件解雇の張本人、現代表理事の証言でした。
原告の懲戒解雇事由の１つに「Ｋ松職員を難詰した」とされる件があります。被告がその証拠とするのは、そのＫ松職員の「口頭審議申請書」と称するメモだけです。そして同じ件でその場にいたとされるＫ．Ｈ･Ｏ．Ｍ両職員には「アリバイ」がありました。名嶋弁護士は、現代表理事にこの点を追及すると、「確認もしていないし、分らない。チェックが甘かったかも知れないが,説明する立場にない。」と開き直り、現代表理事自身がこの件について分らないということを自認せざるをえませんでした。
又、原告解雇事由の１つに、上長の許可を得ないで食事形態を変更したとする件があります。これは、原告らが温かいものは温かく、冷たいものは冷たくという考えから、事前に配膳する方式から、利用者自らが自分で食事を取りにいく「セルフサービス方式」の導入したことを以って解雇事由としているのです。しかし、この件についても事前にＫ指導部長も出席する会議で決定したもので、問題になることではありませんでした。現代表理事は、この件について、その後も続いていたのかということ自体把握せず、「続いていたか否かについては、よく覚えていない。」と証言する無責任なものでした。そして、その後、懲戒解雇事由という重大なことが継続していたか否かについて知らなくても、「これだけで懲戒解雇事由ではないので、問題ない。」と証言する始末でした。
そして、代表理事は、名嶋弁護士から三重県から文書偽造の疑義を指摘された件について追及されると、「ヒアリングを行った結果、解明された。しかし、解明されたとの文書はない。」とし、Ｙ職員が市立四日市病院のカルテから、Ａ型肝炎労災辞退したとの事実が虚偽であるとの追及をされても、「市立四日市病院のカルテは最初に労災として診療を受けたものであり、それがたまたま残っていたものである。本人からの労災辞退のきちんとした文書が署名入りで残っているから、辞退したことは間違いない。」しかし、「労働基準監督署の書類の保存期間が３年で、保存期間を過ぎているため、確認できない。」と、平然と嘘に嘘を重ねる証言を繰り返しました。
更に、Ａ型肝炎問題では、原告の責任は東京電力の原発問題不祥事で責任を取った社長と同様の責任で、原告個人に責任がなくても寮長としての責任はある、と証言し、Ａ型肝炎について原告が「当然やるべき事をやらなかった」という主張を引っ込めざるを得なくなりました。
反対尋問という制約の中でも被告主張が事実に基づかず、デタラメであったことがかなり明らかになりました。