2003年01月10日

新聞記事

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この支援費問題は次のような経過をたどったと報道されています。

◆2003/01/14 21:54 「障害者団体:「支援費制度」で局長交渉へ 「上限」撤回求める」
 『毎日新聞』2003/01/14
 http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030115k0000m040115000c.html

 4月にスタートする障害者の「支援費制度」で、厚生労働省がホームヘルプサービスの時間数に「上限」を設ける検討をしていることについて、全国の障害者団体の代表ら約400人が14日、厚労省に詰めかけ、撤回を求めた。担当課長との交渉は6時間近くに及んだが、結論は出ず、15日に河村博江社会・援護局長と改めて交渉することになった。障害者団体が担当課長と交渉して結論が出ず、局長交渉にまで発展するのは異例。
 交渉では、厚労省障害保健福祉部の担当課長が、支援費制度でサービスの需要が増えると予想される一方、国が出す補助金に限り(280億円)があることなどから、実施主体の各市町村に対し、障害の類型に応じてホームヘルプサービスの時間数か金額の「上限」を示す検討をしていると説明した。
 障害者側は「多くのサービスを必要とする重度の障害者から補助を削るのか」「需要が増える根拠を示せ」と猛反発。上限の撤回を求めたが、担当課長らは決定権がないことを理由に拒否。さらに、国は補助金は出すが、残りは自治体の責任でやる事業という趣旨の発言をしたため、「責任放棄だ」と批判が噴出した。
 障害者らは同省幹部との交渉を求め、大臣室のある10階に殺到するなど、省内は一時騒然となったが、最後に担当課長らが発言を謝罪し「みなさんが大変な不安を持っていることは分かったので、あす引き続き協議させていただきたい」などと述べたため、交渉を打ち切った。 【須山勉】
[毎日新聞1月14日] ( 2003-01-14-21:57 )

◆2003/01/16 11:31 「<障害支援費上限>身障者ら1000人が厚労省前で抗議」
 『毎日新聞』
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030116-00001020-mai-soci

 「4月にスタートする障害者の「支援費制度」で、厚生労働省がホームヘルプサービスの時間数に「上限」を設ける方針を示していることについて、全国の身体・知的・精神障害者ら約1000人が16日午前、東京・霞が関の同省周辺に集まり、方針撤回を求めた。立場の違う障害者団体が1000人規模の共同行動を取るのは初めて。同省周辺で大規模な集会が開かれるのは、95年7月に薬害エイズの抗議で約3000人が旧厚生省を囲んだ時以来という。
 障害者側は当初、全員が厚労省1階ロビーに集まる予定だったが、混乱が予想されたため、同省周辺の路上などで、方針撤回を訴えた。知的障害者を支援する「全日本手をつなぐ育成会」の鈴木伸佳さんは「厚労省は、障害者が生活する場を施設から地域へ移す理念を示しているのに、それに見合うお金はつけておらず、まだ施設偏重のハコモノ意識から抜け出せていない」と話していた。」
 厚労省は限られた補助金を地方自治体に公平に配分するとの理由で、障害者が受けるホームヘルプサービスの利用時間などに基準を定め、補助金の配分額を算定する方針。障害者側は「基準を盾に現行のサービス量を削る自治体もあるはずで、基準は事実上の『上限』だ。サービスは減らさないというこれまでの厚労省の説明は何だったのか」と強く反対している。 【須山勉】」

2003/01/21 「障害者を”閉め出し” 厚労省の支援費説明会「傍聴許可すれば混乱」」 『毎日新聞』2003/01/21夕刊:9
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030121-00001025-mai-soci
<厚労省>障害者支援会議の傍聴認めず 「混乱が生じる」

 「厚生労働省は21日、省内で、都道府県の担当部長らが参加する「全国厚生労働関係部局長会議」を開いたが、一般の傍聴を認めなかった。これまでは公開しており、異例の対応。4月に始まる障害者の「支援費制度」で、同省がホームヘルプサービスへの補助金を市町村に配分する際、サービスの時間数をもとに基準を定めようとしていることに障害者団体が反発しており、「傍聴を許可すると、混乱が生じる恐れがある」(同省障害福祉課)と説明している。
 会議は午前10時に同省講堂で開会し、午後3時から社会・援護局が支援費制度に関する説明を行う予定。傍聴を希望していた「全国自立生活センター協議会」の中西正司代表らによると、20日になって同課から電話で「こういう事態なので、今回の傍聴は職員と報道関係者に限る」と連絡があったという。
 会議資料については希望者に配布されるが、中西代表は「代表者も含めていっさい傍聴はできないのは異例で、悲しい状況だ」と話している。厚労省には連日、障害者が抗議に訪れており、16日には1000人以上が集まった。このため、同省は現在、出入口の一部を閉鎖するなどの特別警戒を行っている。
 厚労省は28日の全国関係主管課長会議で、補助金配分の基準案を示す方針。全国の障害者団体は基準の設定自体には反対していないが「ホームヘルプサービスの時間数を元にした補助金の配分基準は、市町村が行うサービスの『上限』になりかねない」と強く抗議している。【須山勉】」(毎日新聞)

◆2003/01/21 20:57 厚労省:障害者支援費制度説明、自治体の質問5分で打ち切り
 毎日新聞ニュース速報
 http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030122k0000m040109000c.html

 「厚生労働省は21日、都道府県の担当部長らを集めて「全国厚生労働関係部局長会議」を開いた。障害保健福祉部の職員が、4月から障害者の「支援費制度」でホームヘルプサービスの補助金を自治体に配分する際の基準を設ける考えなどを40分以上にわたり説明したが、都道府県からの質問は1人しか受け付けず、5分で打ち切った。
 補助金の配分基準について、同省は全身性障害者の場合、1人当たりのサービス量を月120時間までとすることなどを検討中で、基準を超えたサービスは自治体の財源でまかなうべきだとしている。これに対し、障害者側は「財政難の自治体が多い中、基準はサービス利用時間の『上限』につながる」と抗議活動を続けている。
 部局長会議はこれまで一般傍聴が認められていたが、この日は「混乱の恐れがある」として非公開となった。同省は会議で、配分基準を設ける理由として、(1)自治体によってホームヘルプサービスの利用実態にばらつきがあり、公平な配分が必要(2)サービスの需要増で、補助金の予算(290億円)が足りなくなる恐れがある――を挙げた。
 質疑では、東京都の高原俊幸・在宅福祉課長が「利用実態にばらつきがあるのは、サービスの充実に努めてきた自治体があるということ。そういう自治体への補助金を、水準が十分でない自治体に配分するという考えか」とただした。
 同省の上田茂・障害保健福祉部長は「配分基準は取り組みが遅れている自治体の目標になる」などと答えた。ほかにも複数の都道府県担当者が発言を求めて挙手していたが、司会役の職員が「時間の関係で」と会議終了を宣言した。
 手を挙げていた神奈川県の鈴木健一・障害福祉課長代理は「今後のホームヘルプサービスの進め方をお聞きしようと思っていたのですが……」と苦笑していた。【須山勉】」
[毎日新聞1月21日] ( 2003-01-21-21:01 )

◆2003/01/21 19:53 「障害者福祉サービス 「時間上限設定に反対」−−県内3団体、要望書提出 /三重」
 毎日新聞 三重ニュース
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030121-00000006-mai-l24

 行政が決めていた障害者福祉サービスを4月から障害者自身が選ぶようにする「支援費制度」で、厚生労働省がホームヘルプサービスの時間に上限を設けることを検討している事態を危ぐし、重度障害者や支援者らでつくる県内3団体がこのほど、時間上限を設けないよう求める要望書を、県内各政党や厚労省に提出した。
 要望したのは、「自立生活センター津」(大田真也代表)、「ボランティアサークル プラスワン」(松田慎二代表)、「津チャレンジネットワーク」(多賀輝宏代表)。
 3団体は「多くの障害者が、今後のホームヘルプ利用に強い不安を感じている。上限が設けられれば、私たち障害者にとって死活問題になる」と不安を訴える。要望書では、時間上限を設けないよう求めるとともに、一部自治体で実施されている24時間滞在型介護保障の制度を、国内全自治体で導入するよう推進することなどを求めた。【荒川基従】(毎日新聞)
[1月21日19時53分更新]

◆2003/01/24 「障害者支援――地域福祉の名が泣く」
 『朝日新聞』2003/01/24社説
 http://www.asahi.com/paper/editorial1.html

障害者支援――地域福祉の名が泣く

 厚生労働省の周辺に、連日のように車いすの人たちがやってくる。日が暮れても、建物の前から動こうとしない。
 4月から新しく始まる支援費制度を目前にして、厚労省が突然、地域での生活を支えるホームヘルプサービスに実質的な「上限」を設ける方針を打ち出したからだ。
 障害者や支援団体は、危機感をつのらせ、抗議の声をあげている。
 支援費制度は、高齢者の介護保険のように、一定の自己負担とともに、どんなサービスを受けるか、どの事業者を使うかを障害者自身が選べるようにするものだ。ホームヘルパーから食事や入浴などの介助を受けて、地域で暮らすことも夢ではなくなると障害者や家族は期待していた。
 その中心となるのは、自治体が行うホームヘルプサービス事業だ。国は10年ほど前から費用の2分の1の補助金を出して、その育成をはかってきた。
 ところが、厚労省は実績にあわせて出してきた補助金の配分を変える考えだ。
 来年度からは全身に障害のある人で月120時間程度、重い知的障害の人は50時間など、平均利用時間から割り出した障害別の基準にもとづいて人数分の補助金を支給することにしたいというのだ。
 「全国一律のサービスが受けられるよう公平に配分するためだ。上限ではなく基準と受け取ってもらいたい」と厚労省は説明している。
 しかし、これから取り組む自治体では、国の基準がそのままサービスの上限になる可能性が高い。一方、手厚いサービスを行ってきた自治体では補助金が減らされ、サービスが低下する心配がある。
 努力を重ねてきた自治体は、自分たちへの補助金を削って何もしてこなかったところに回すのか、と反発している。
 障害者も支援団体も無制限に補助金を出せと言っているのではない。「限りある大切な補助金だからこそ、今の案をいったん白紙に戻して、有益な配分方法を当事者と一緒に考えてほしい」と訴えているのだ。もっともな提案ではないだろうか。
 熱心な自治体はこの補助金を活用し、障害者の切実な声に応えてサービスの拡充につとめてきた。厚労省も上限を設けることなく、ひとりひとりの障害に応じたサービスを提供するよう指導してきた。
 その結果、1日10時間以上の介護が必要な重度の障害者も施設から出て、アパートやグループホームなどで暮らすことができるようになった。
 厚労省の方針が実施されると、せっかく地域で生活を始めた人たちが、また施設に戻らなければならなくなる恐れも強い。
 来年度からの「新障害者プラン」で厚労省は「施設から地域へ」という基本方針を打ち出したばかりだ。それなのに、「利用者本位」の支援費制度の内実がこんなことになっていいはずはない。

◆2003/01/25 00:45 厚労省庁舎が一時完全封鎖、障害者補助巡り対立
 読売新聞 1月25日0時45分
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030124-00000314-yom-soci

 「4月から始まる障害者福祉の支援費制度をめぐり、厚生労働省が補助金の配分に「上限」を設ける方針を示していることに障害者団体が反発している問題で、24日午後8時前から約20分間、同省などが入る東京・霞が関の中央合同庁舎5号館の出入り口が完全に封鎖される騒ぎがあった。
 庁舎出入り口周辺で抗議行動を続けている障害者や介護者の一部が、さくを乗り越えて庁舎内に入ろうとするなどしたため、同省が出入り口をすべて封じた。
 障害者団体が提出していた要望書に対し、厚労省がこの日、回答することになっていた。障害者側が厚労相名の文書で回答を求めたのに対し、同省側は担当課長が口頭で回答すると主張し、平行線をたどっていた。(読売新聞)」

◆2003/01/27 19:55 「障害者支援費:厚労省が「上限」撤廃 障害者団体と合意」
 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE 新聞掲載は01/28朝刊
 http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20030128k0000m040059000c.html

 「障害者の「支援費制度」で、厚生労働省がホームヘルプサービスの補助金配分基準を設けようとしたのに対して、障害者4団体が「サービスの『上限』になる」と反発していた問題で、27日双方の合意が成立した。厚労省は、同制度移行時は原則として現在の補助金配分額を維持するなど障害者側の要望をほぼ受け入れた。同省の河村博江社会・援護局長は4団体側に「コミュニケーション不足があった」と反省の弁を述べた。
 4団体は、日本障害者団体連合会、日本障害者協議会、全日本手をつなぐ育成会、DPI日本会議。厚労省との合意事項は配分額の確保のほか(1)今回定められるのは市町村への補助金の交付基準で、個人のサービスの支給量の上限ではない(2)交付基準は今後、利用状況を踏まえて見直す(3)障害者が参加する在宅サービスの検討会を早期に設置し、来年度から補助金が打ち切られるコーディネーター事業の問題なども協議する――など。
 合意後、厚労省が発表した補助金の交付基準は▽一般障害者が月約25時間(6万9370円)▽視覚障害など特有のニーズ(ガイドヘルプなど)を持つ障害者が同約50時間(10万7620円)▽全身性障害者が同約125時間(21万6940円)。この基準に基づいたうえ、これまでの補助金額を下回る市町村には、上乗せして従来の額を確保できるようにする。
 厚労省には14日から障害者団体が連日抗議に訪れ、同省側も特別警戒態勢を取るなど緊迫した状況が続いていたが、ほぼ2週間ぶりに解決する。
 初めて統一行動をとった4団体の代表は記者会見で「100%満足ではないが、『上限』撤廃が得られた。地域で生きる障害者のサービス事業をより充実させるため、今後も協力して活動したい」などと述べた。【須山勉】」
[毎日新聞1月27日] ( 2003-01-27-19:58 )

投稿者 user4 : 2003年01月10日 21:05