2003年12月23日
準備書面第一部（抜粋・被告主張の代表的な虚偽）
被告は利用者に対する人権侵害を容認するだけでなく、本件原告の加藤さんの解雇を貫徹するため、文書偽造をはじめとする多くの虚偽の主張を行った。
証拠上も明白な虚偽について名嶋弁護士は準備書面において次のように主張する。
準備書面第一部
（略）
第三 被告提出証拠・及び証言の信用性の欠如（総論）
一 はじめに
以上、第一部において、原告は、被告が「主張」し、「立証」した個々の懲戒解雇事由について、その全てが歴史的事実に反した虚構であることを明らかにしたが、その過程で、被告の立証活動が、如何に訴訟上の信義則に反し、偽証、虚偽陳述をもいとわないものであり、信用性が乏しいものであるか、あるいは欠如したものであることについても個別に述べてきた。以下、改めて被告提出証拠・及び証言の信用性の欠如の甚しさについて総論的に述べる。
そこで先ず本件訴訟に至る経緯を振り返ってみると、被告は、本件に係る仮処分段階においても、本件訴訟においても、又、本件に先立つ原告配転差し止め請求事件においても、更には、別件Ｙ職員の懲戒解雇を巡る裁判においても数多くの虚偽主張・偽証を重ねてきた。
しかも、被告が自己の正当化のために平然と虚偽主張を行う体質であることは、司法手続きにおいて顕著であるのみでなく、被告の監督官庁である三重県に対しても平然と虚偽報告を為し、三重県知事から「文書偽造の疑い」を指摘されていることからも明らかであるといえる（甲106の１、2）。
そして、この被告の虚偽主張、偽証体質を正しく見抜かれたからこそ、本件に係る仮処分事件の決定において、御庁は、具体的虚偽事実を挙げ、現代表理事について「本件陳述書はこれを措信することができない。」と認定されたものと考える。
以下、被告が為してきた数多くの虚偽の中でも、幸い客観的証拠等があって、その虚偽性が見え易い代表的な虚偽について述べることで、被告が平然と虚偽主張、偽証を行う体質を持つことを明らかにしていく。
尚、以下、先ず下記二項においては、本件訴訟手続きに係わる虚偽、三項においては、本件仮処分段階における虚偽、四項においては、本件に先立つ原告配転差し止め請求事件における虚偽、五項においては、被告の監督官庁である三重県に対する虚偽の順で代表例を述べていくこととする。
二 本件訴訟における被告の虚偽
１ Ｙ（旧姓Ｉ）職員労災辞退の件
(1) 被告の偽証及び文書偽造に至る経緯
冒頭に概括的に述べた被告の偽証体質についてその面目躍如とも言うべき事例がＹ職員に係わる「労災保険給付請求書の取り下げ申請書」偽造の件である。
即ち、原告は、その準備書面（１４）、第２、２、（５）項（１１頁）において主張したが、被告は、本件解雇事由であるとしているＡ型肝炎問題について、原告に科した処分の時期的矛盾を誤魔化すため、公的文書の保存期間が５年であることを利用して「訴外Ｉが労働災害給付を取り下げ」たという事実を捏造し、Ａ型肝炎「終結宣言」の日時を作為してきた。
(2) 偽造文書である「労災保険給付請求書の取り下げ申請書」
ア はじめに
この被告の虚偽に対し、原告は、Ｙ（旧姓Ｉ）職員のＡ型肝炎に関する四日市市民病院診療記録（甲３８の１、２）を提出し、Ｙ職員が労災として診療を受け退院した事実を明らかにし、Ｙ職員が労災保険給付の辞退などしていないことを立証した。
しかるに、被告代表理事は、被告の作出した虚偽を誤魔化し切るため、本法廷において「労災の適用を辞退したと、これは本人から辞退のきちんとした文書が署名入りで残っておりますから、」と、なお虚偽の証言を重ねた（第15回被告本人調書19頁）。
この代表理事の虚偽証言に対して、当該職員であるＹが本法廷の主尋問において「私は（労災給付を）辞退しておりません。」、「代表理事さんは、私が労災を辞退したとする署名入りの文書が聖母の家に残っていると、この裁判で証言しました。しかし、わたしは、そのような書類は絶対に書いていません。代表理事が言われるように存在するのならば、ぜひともその書類を提出してください。」との反論の証言を行うと（第16回Ｙ調書２〜３頁）、被告は、こともあろうに、Ｉ（旧姓）職員が書いたとする「労災保険給付請求書の取り下げ申請書」なる文書（乙第２５８号証、以下、本件取り下げ偽造書とも言う。）を偽造し、Ｙ職員の反対尋問における弾劾証拠として提出してきた。
しかし、乙第２５８号証は被告が文書偽造したものに間違いない。
以下、乙第２５８号証が偽造文書であることについて順を追って述べる。
イ 労災で診療を受けた
先ず、そもそもＩ（旧姓）職員が労災認定で治療を受け、この労災認定に取り下げなどの変更が無かったことは、甲第２５３号証の１、２の四日市市民病院に対して行った弁護士照会からも以下のとおり争いようのない事実である。
� ‐伐顳温爐痢嵋楫鐃芭典�録には「保険種別」の欄があり、単純に「労災」とのみ記載されていますが、本件Ｉに貴院では入院から退院まで、労働災害を使用して診療したということですか。」との質問に対する市立四日市病院の回答２項には、「Ｉさま入院中の診療は労働災害保険を使用しました。」とあり、
�◆ー，法⊂伐顳街爐痢峪藩僂気譴詈欷閏鑛未�、事情の変更により、初診以後に変更された場合、診療記録の「保険種別」の欄の記載は変更されますか。」との問いに対する、市立四日市病院の回答３項には「変更されて、『変更前』の診療録用紙は『削除』されます。」とあり、
�� 更に、照会４項で、「使用保険が労災保険から社会保険に変更された場合、…「負担割合」の欄の記載は変更されますか。」との問いに対する市立四日市病院の回答４項には「変更されます。あらためて書きます、二重線による訂正ではないため、診療録ごと差し替え、元の用紙は記録として残りません。」とある。
即ち、甲３８の診療記録が最終的なものであって、甲３８の診療録以外に、保険種別や「負担割合」が訂正された診療録が存在する可能性はなく、Ｙ職員が労災適用で治療を受けたことは、間違いない事実なのである。
ウ 「本件取り下げ書」にＹ職員の旧姓「Ｉ」と署名されていた矛盾
一方、平成５年１月２８日付「本件取り下げ書」には「Ｉ」とＹ職員の旧姓での署名が為されている。しかし、Ｙ職員は、被告が本件文書が作成されたと称する平成５年１月２８日時点では既に結婚し、Ｉ姓からＹ姓に変わっている。
一般に女性にとって、婚姻によって姓が変わることは、人生の一大事であって、新婚とも言える時期には、特にはっきり意識して、新たな姓を用いるものであり、Ｙ職員がこの文書に「Ｉ」と旧姓で署名を行うはずがない（甲254、255）。
現に、Ｙ職員が、平成４年１０月１７日の挙式後、被告内において一貫して「Ｙ」姓を用い、Ｙ姓で通用していたことは、挙式半月後の「平成４年１１月６日」付会議録（甲257）、挙式１ヶ月半後の平成４年１２月の被告作成勤務表（甲256）に「Ｙ」と新らたな姓で記されていることからも争いようがない。
被告が本件偽造文書において、作成者姓が旧姓となっているという矛盾は、被告が「本件取り下げ書」を偽造するに当たって、うかつにもＹ職員が結婚し姓が変わっていることを失念した結果起きたものであるとしか考えられないのである。
エ 申請日付の時期的矛盾
ところで、Ｙ職員の労災認定は、甲２５３の２・弁護士照会から明らかなように「平成４年８月７日」に為されており、方や乙２５８の「本件取り下げ書」申請日付は、労災認定から５ヶ月半後の「平成５年１月２８日」である。
しかし、そもそも「労災給付請求取り下げ申請」は、文字通り、労災の認定前に行う手続きであり、行政処分である労災認定が既になされているのに、労災給付請求の取り下げを行うことは出来ない。従って、乙２５８の「本件取り下げ書」は存在し得ず、この点からも本件文書は偽造文書であることが明らかである（甲271の1）。
更に、善意に解釈して、被告が労災認定前の申請の取り下げでなく、労災認定後の手続きである不服申立である「審査請求」を行ったと仮定してみても、「審査請求」は労災認定通知後６０日以内に行わなければ受理されず、労災認定から５ヶ月半後に申請したと被告が行ったと主張している乙２５８・「労災保険給付請求書の取り下げ申請書」が偽造文書であることには何の変わりもない（甲271の1）。
オ 被告の行動からも伺える偽造文書性
原告は、労働基準監督署の監督官から、被告が乙２５８を裁判所に提出する前、Ｙ職員に関する労災の書類が労働基準監督署に存在するかどうかを確認する為、労働基準監督署を訪れたということを聞いた（第18回原告本人調書6頁）。
しかし、乙２５８のＹ職員自筆の労災給付請求取り下げ書の写しを持っていると称している被告には、労災に関する書類について労働基準監督署に確認に行く必要はなく、この被告の行動も文書偽造の為の下準備だとしか考え得ない。
即ち、公文書の保存期間が５年間であることを利用し、Ｙ職員の労災給付辞退という主張を捏造した被告は、市立四日市病院に偶然８年前の同職員の診療記録が残っていたことから虚偽が明らかになった為、今回も二の舞になる事を恐れ、同職員の労災に関する書類が残っていないか確認に行ったのだとしか考え得ず、この被告の行動も乙２５８が偽造文書であることを間接的に裏付けていると言えるのである。
カ 元被告管理者Ｈ氏も偽造文書であることを明言
この乙２５８の「取り下げの理由」の欄は、元被告管理者であるＨ氏の字で記載されているため、原告とＹ職員は事実確認の為Ｈ氏を訪れた。
Ｈ氏は、原告とＹ職員に対して、
「こんな書類見た事がない。」、
「字は自分の字だが、書いていない。」、
「やっぱり切り貼りだと思う。偽造だと思う。なんかの形で偽造したんだ。」
と発言し、この乙２５８は、Ｈ氏の字を利用した偽造文書だと明言している（甲270、なお、上記会話を録音したテープも存在する）。
このＹ職員労災辞退の件から明らかなように、被告は己の虚偽を誤魔化す為には、更に、他人名義を騙って私文書偽造まで平然と行うのである。
(3) 更に争点を誤魔化し無意味な「鑑定書」を提出
被告はその上更に、「取り下げ申請書」が偽造文書であることを誤魔化すために、全く意味のない「鑑定検査書」なるものを出してきた。
即ち、Ｙ職員は「取り下げ申請書」に署名した事は否定したが、この「取り下げ申請書」の署名欄の「Ｉの字がＹ職員の筆跡でないとは否定していない。つまり、この署名欄の字がＹ職員の字である事に争いはなく、被告内にいくらでも存在するＹ職員の真筆の字を張り合わせてコピーすれば済むことである。問題はＹ職員がこの文書に直接署名したかどうかであるが、この「鑑定検査書」は、その点について何の意味もなく、前述した「取り下げ書」が偽造であるとのＹ職員らの主張の何の反証にもなっていない。
結局、被告は、全く意味のない「鑑定検査書」を相当額の金銭を費して作成・提出し、法人に損害を与え、そのため本来施設利用者のために使うべき大事なお金を浪費しているのである。
２ 人権侵害事実についての虚偽
被告現施設長は本法廷における証言において、原告が当初提出した、被告施設利用者Ｙさんの身体中にある痣のスケッチ（甲53）について、「これなるものが事実と違う」との虚偽の証言を行った（第１５回現施設長調書２３頁１２行）。
しかし、甲第５３号証のスケッチが事実であることは、スケッチの元になった「写真撮影報告書」（甲238の1）から明らかである。
更に、本法廷において、このスケッチの事実はないとの虚偽の証言を為した現施設長は、別件横地職員地位確認裁判においては、この甲５３のスケッチのＹさんの身体中にある痣は、Ｙさんが「血小板減少性紫斑病」という病気である為であるとの、本件における証言と全く矛盾した証言を行っていたのである（乙252・現施設長調書18頁）。
その上更に、この別件横地職員裁判における現施設長の「Ｙさんが血小板減少性紫斑病という病気だ」との証言も全くの虚偽である。
結局、以上の経緯から言えることは、現施設長は別件Ｙ職員裁判において、Ｙさんが血小板減少性紫斑病であるとの証言が数々の証拠（甲133、592、598、606）によって事実に反することが明らかになると、本件では平然と別件Ｙ職員裁判における証言と全く矛盾する嘘をついて、嘘に嘘を塗り重ねているのである。
この現施設長の虚偽は、平然と虚偽主張を行う被告の体質を顕著に表していると同時に、本来施設利用者を守るべき責務を負っている障害者施設の施設長である現施設長の自らの責務を放棄した悪質な管理・運営を象徴しているとも言える。
３ あゆみ寮女子棟利用者の体重を巡る虚偽
更に、現施設長は本法廷において、原告ら組合の悪印象を作り上げようと悪質な嘘を吐いている。
現施設長は、その代理人から「加藤光二さんをリーダーとする」「このグループの言動の特徴」をと聞かれ、「女子の方、医者の方から入所者の半数が肥満と、残る半数の人も肥満予備軍だと言われ」たと証言した（第13回現施設長調書6頁）。
しかし、この現施設長の証言も全くの 虚偽である。
甲２１９の１・「あゆみ寮女子利用者身長体重表」、甲２１９の２・「あゆみ女子棟におけるＢＭＩ指数」を見れば、肥満の割合は１１％で、逆に低体重は３２％、正常は３６％であり、６８％は正常域及び正常以下である。
このように事実に全く則していない発言を、医師が、施設の最高責任者である施設長に無責任に為すはずもなく、あゆみ女子棟の利用者の半数が肥満で残りの半数が肥満予備軍であるとの現施設長の証言が完全な虚偽であることは一目瞭然である。
その証拠に、現施設長は、主尋問では「医師の方から」言われたと証言していたが、その矛盾を突かれて反対尋問においては「看護婦」から聞いたとその証言を変遷させている（第15回現施設長調書19頁）。
４ Ｋ組合員労災認定についての虚偽
現施設長は、人権侵害を行っているのは原告らグループであるとし、その例として、原告らの分会員であるＫ職員が「利用者に暴力を振るった」と証言した（第13回現施設長調書13〜16頁）。
そして、現施設長は、反対尋問の席上、このＫ組合員の件について、労働災害が認定されたかどうか「確認していません。」と証言した（第15回現施設長調書29頁）。
Ｋ職員の人権侵害事実など存在せず、同職員は障害者からの傷害行為により労災認定をうけたのが事実であるが、その経緯を無視し、被告は、夜間、一人の女 性職員を５人の男性職員で取り囲んで２時間に亘り事情聴取を行った。被告がそれほどまでに、重大な問題だとしていた現施設長が、この件について、労働災害が認定されたかどうか知らないはずがなく、この証言も虚偽であることは明らかと言える。
更に、現施設長は、この件について「労働基準監督署が施設に来たという話も聞いていませんし、実態を見たと、直接目撃した職員から話し聞いたというのもありません。」との証言をした（第15回現施設長調書30頁）。
しかし、この現施設長の証言もまた虚偽である。
甲２５０の１、２の「弁護士照会」から明らかなように、労働基準監督署は、この件について、目撃したとするＭ職員にも事情聴取を行い、その結果、Ｋ分会員の労働災害を認定しているのである。
労働基準監督署が被告施設の現場最高責任者である現施設長を通さず、被告現場職員であるＭ職員に対して事情聴取を行うはずもなく、Ｍ職員もまた、現施設長に報告しないはずがない。
５ 明らかな文書偽造
被告は準備書面（七）において、原告懲戒解雇事由の１つであるとしていた「原告が９２年１０月２３日、被告事務部門の一般職員に怒鳴り込」んだとする件に関する根拠であるとして、乙３５の添付資料の「要求書」を提出してきた。
しかし、そもそもこの「要求書」については、原告準備書面（１４）、第２、３、（４）項、13頁において詳細に反論しているところであるが、「実在するはずがないもの」なのである。
何故なら、この「要求書」が提出されたとされる日の１年前の９１年１０月１８日付け三重一般労組本部作成の「聖母福祉分会の結成と今後の対応について」と題する文書の３項において、
「両分会並存期間中、分会が会社に提出する文書（要求書・申入れ書・抗議文等）は本部と協議のうえ、本部の名前を入れ、本部の印鑑を押して提出する。」（甲117）とされており、
分会文書に本部名と本部印が要求されることになった上記９１年１０月１８日付けの本部通達以降である本件９２年１１月１３日付けの被告法人宛「要求書」には、仮にそれが成立の真正な文書であれば、当然ながら、本部労組名の記載と本部印があるはずである。
しかるに、この乙３５の１には、本部名も本部印もない。
結局、乙３５の１の添付資料である「要求書」は、組合内部の事情に通じておらず、甲１１７の通達を知り得ない被告が、偽造文書であることを隠し通せると錯誤して提出した偽造文書に過ぎないことは、一目瞭然であると言える。
この「要求書」が偽造文書であったことは、その後の被告の対応から、更に明らかとなった。
即ち、被告準備書面（七）においてこの件を原告の懲戒解雇事由としていた被告は、原告が準備書面（１４）において、上述のとおり、「要求書」が偽造文書である根拠を主張すると、その後の被告第１４準備書面において、この件について反論するどころか一切触れず、この件を原告懲戒解雇事由から外してしまったのである。
６ 現代表理事陳述書の虚偽
現代表理事は、乙７６の「懲戒処分について」と題する陳述書の３項において、「園においてＡ型肝炎の感染者が出た … この一件を重視した園としては、園生の生命・健康管理の点から、乙４９号証が示すように、加藤の寮長職としての職務を停止しました。」と陳述している。
しかし、この現代表理事の陳述は全くの虚偽である。
何故なら、被告が原告の職務執行停止の根拠としている乙４９の被告文書「寮長職職務執行停止」を点検すると、その理由には、Ａ型肝炎問題は一切書かれていないのである。
このように乙４９を見れば虚偽であることが一目瞭然である主張を、あえて現代表理事が行った理由を推察すると、元々、被告法人としてはＡ型肝炎終結当時原告の責任など一切問題にしておらず、慰労さえしていていたにもかかわらず原告の対応を、後になって突然、問題とし、原告の懲戒解雇事由としたことを正当化する為であったとしか考えられない。
即ち、被告は、Ａ型肝炎問題を原告の懲戒解雇事由に作り上げるために、「寮長職務執行停止」（平成５年５月１日）の時期からＡ型肝炎問題を問題にしていたとの「事実」を捏造しようとしたのである。
７ Ｋ理事証言の虚偽−県庁におけるビラまき
この点については、懲戒解雇事由の一つであるセクハラ怪文書事件に関する反論の中でも一定述べたが、被告の偽証体質の重要な例でもあり、この点に焦点を当てて、改めて述べる。
即ち、被告理事であるＫ氏は、「セクハラ怪文書が県庁でまかれたと聞いた」との証言をした（第14回Ｋ理事調書１頁）。
しかし、甲第２２３号証の１、２・三重県に対する弁護士照会とその回答から、三重県庁でセクハラ怪文書が撒かれた事実がないことは明らかであり、この証言も虚偽である。
Ｋ理事は、反対尋問において、「セクハラ怪文書が作成された２、３ヶ月後で、Ｋ、職員らから、県庁でセクハラ怪文書が撒かれたと聞いたが、その時は被告管理者には話さなかった。又、その事を上申書・陳述書に書かなＭかったのは、上申書・陳述書を提出した後に聞いたからである」という趣旨の証言をしている（第15回Ｋ理事調書2〜6頁）。
しかし、この証言も矛盾に満ちており、虚偽である。
何故なら、セクハラ怪文書が被告当時施設長によって、各職員室に掲示されたのが平成５年２月２０日であり、Ｋ理事の陳述書の作成年月日は平成５年７月２５日である。
即ち、「セクハラ怪文書が作成された２、３ヶ月後で、Ｋ、Ｍ職員らから、県庁でセクハラ怪文書が撒かれたと聞いた」という趣旨のＫ理事の証言が事実であると仮定すれば、Ｋ理事は陳述書を裁判所に提出する前に、県庁でセクハラ怪文書が撒かれたことを聞いていたのである。
そもそも別件Ｙ職員裁判当初からセクハラ怪文書の件を確たる根拠もなく原告らの所為にしてきた被告が、Ｋ理事が本件において証言するまで、セクハラ怪文書が県庁において撒かれたという主張は一切していないのである。
仮にＫ、Ｍ元職員から聞いたのだとするＫ理事の証言が事実であると仮定してみても、Ｋ，Ｍ職員は、Ｉ元施設長が作った「第二組合」の役員達であり、Ｋ、Ｍ元職員らが県庁でセクハラ怪文書が撒かれた事実を知っていたとすれば、Ｉ元施設長に報告しないはずがないという矛盾に突き当たる。特に、Ｍ職員は同様に本件セクハラ怪文書の件が解雇事由とされていた別件Ｙ職員裁判において、被告管理者の一人として証言に立っており、そのＭ職員が被告に県庁でセクハラ怪文書が撒かれたという事実を御注進に及ばないはずがなく、セクハラ怪文書の作成者が特定されるこの事実を、被告が主張しないはずがないのである（甲259）。
Ｋ理事の証言も、単なる不当な憶測のみでセクハラ怪文書の件を原告の懲戒解雇事由としたことを正当化するためにＫ証人が偽証までしたものとみるのが合理的である。
８ Ｍ証人証言の虚偽
被告申請のＭ証人は、「原告らは作業指導、食事指導を放棄していた」と証言したが、原告が寮長として運営しており、Ｍ証人も出席していたあゆみ寮ではその寮会議において、作業指導についても、食事指導についてもきちんと話し合われていたことは、甲２３５・「あゆみ寮寮会議報告」から明らかであり、Ｍ証人のこの証言は全くの虚偽である。（甲167、168、第16回Ｏ調書12〜13頁）
三 本件に係る仮処分における虚偽
１ 被告主張を合理化するための現代表理事陳述の虚偽
被告現代表理事は、本件に係る仮処分において、原告が通勤経路を誤魔化しているとの事実に反した被告主張を合理化するため多くの偽証を行ってきた。
その為、仮処分事件判決において、御庁は具体的事例を挙げ、現代表理事の「本件陳述書はこれを措信することができない。」と認定された。
以下、現代表理事陳述の明らかな偽証の代表例について再確認する。
２ 公共交通機関である三重交通バスの到着時間の偽証
現代表理事は、平成１０年１２月１０日付陳述書において「時刻表では、三交バス四日市駅７時５０分発が間に合う計算ですが実態は、通勤時のラッシュにより月〜金曜日は恒常的に２０分位の遅れがあります。従って遅刻となりがちです。」(乙27)と陳述している。
現代表理事のこの陳述の趣旨は、近鉄四日市駅７時５０分発の三交バスの「聖母の家前」の到着予定時間は８時１３分であり、三交バスは「恒常的に２０分位の遅れ」があるので、７時５０分発の三交バスを使用し通勤すれば、原告は８時３０分の出勤時間に間に合わない為遅刻せざるを得ず、原告は遅刻していないのであるから、この通勤経路を使っておらず、原告は経緯を誤魔化しているというものである。
しかし、現に原告は７時５０分発の三交バスを使用して、８時３０分の出勤時間に間に合っていた。
この現代表理事の虚偽主張に関して、原告が三重交通株式会社（三交バス）四日市営業所に問い合わせたところ、同営業所は「近鉄四日市７時５０分発笹川テニス行き定期バスにつきましては、運行記録計による調査の結果、特別の道路障害のない限り『聖母の家』到着は５分から10分の遅れです。」（甲105）と回答し、現代表理事の陳述が全くの虚偽であることが明らかになった。
現代表理事は、原告が通勤経路を誤魔化しているとの被告主張を合理化する為、意図的に公共交通機関のありもしない「恒常的」な「２０分の遅れ」を作出し、虚偽の陳述をしているのである。
３ 原告通勤経路調査についての虚偽
現代表理事は更に、原告が通勤経路を誤魔化しているという被告主張を合理化するため、平成１０年１２月１０日付現代表理事陳述書（乙27）において「小職が問題発生時５月３１日〜約2週間四日市駅で毎朝観察した。」との虚偽陳述もしている。
先ず、現代表理事は、この平成１０年１２月１０日付の陳述書では「約２週間四日市駅で毎朝観察した」としているが、他方、この陳述書の２ヶ月前の平成１０年１０月５日付の同氏の陳述書（本件の前審である仮処分事件疏乙第１０号証）では「確認のための調査活動はいたしませんでした。」と全く自己矛盾した陳述をしていた。
次に、そもそも、現代表理事が原告の出勤経路の『観察』を始めた初日としている平成１０年「５月３１日」は、日曜日であり、原告の公休日である。
原告の公休日を土曜日、日曜日と決めたのは、他ならぬ現代表理事自身であり、現代表理事が原告の公休日から原告の出勤経路等の観察、調査を始めるということは有り得ず、この陳述も又見え見えの杜撰な虚偽である。
この点について、御庁は同旨の判断を示している。
即ち、上記２項の場合と同様、現代表理事は己の主張を合理化するため、此処でも平然と虚偽主張を行っているのである。
４ 退勤について
現代表理事は、又「加藤氏は退勤時も朝と同じくあたかも塾に通う子供を母親が送迎するように、特定の女性の出迎えがあり、それを利用していることが、ほとんど毎日であった。」(乙27)と、原告の退勤時の通勤経路に関し具体的に記述しているが、この記述の根拠は『毎朝観察し』た事であった。
朝（出勤時）の観察が、退勤時の状況観察の根拠になり得るはずもなく、この記述も作文以外の何物でもない。
この点についても、御庁は同旨の判断を示している。
四 配転差し止め請求事件（平成７年（ワ）２９５号事件）における虚 偽
被告は、原告の被告施設における労働組合活動、及び、被告施設利用者に対する人権擁護活動を嫌悪し、差別してきた。
被告は、「全国施設職員研究協議会の２０年の永年勤続表彰」には、従来全受賞職員を参加させてきたが、受賞者となった原告だけには、同研究協議会の参加を拒否し、差別した。
原告が、この点について、職員差別にあたる旨主張すると、被告は、「原告は、本件配転以降も３回程度右協議会（全国施設職員研究協議会）に参加している」（尚、別件加藤配転無効事件平成７年（ワ）２９５号事件、平成９年１２月５日付被告準備書面（第五）１０頁３行にて本件被告が主張。）とし、原告企画室配転時の平成５年より、先の被告準備書面提出時の平成９年までの４年間の間に、原告を同協議会に３回参加させたとの虚偽主張を為し、原告に対する差別の事実を誤魔化そうとしてきた。
しかし、配転後、原告が同協議会に参加したのは１回だけであり、その事実は、同協議会の主催者である愛護協会が作成した全国施設職員研究協議会の参加者名簿（甲273の1〜5）からも明らかな事実であった。
被告は、原告に対するその不当労働行為意思を誤魔化すため、この件においても平然と虚偽主張を行っているのである。
五 監督官庁である三重県に対する虚偽
原告準備書面（１３）において、詳細に主張したところであるが、被告は被告施設の監督官庁である三重県に対しても平然と虚偽の報告を行い、司法手続きのみならず行政当局である三重県からも「文書偽造の疑義」を指摘されている。
即ち、被告は、被告法人利用者作成名義の「障害者福祉年金払出願」等２種の文書について、三重県から、
「３人の利用者の預かり金から、法人が借り入れしているにもかかわらず、会計処理上、理事長及び施設長個人から借り入れしたことになっている。また、『障害者福祉年金払出願』によると『（入所者の）実家の改築の資金』用として払い出されている。以上の点から、文書偽造の疑義があるので解明するとともに、今後、このようなことがおきないよう改善策を講じること。」と指導を受けているのである。
公の機関が相当の根拠なしに「文書偽造の疑い」を指摘する筈もなく、事実であるとしか考え得ないのである。
前述のとおり、二の１項のＹ職員労災辞退の件では本件司法の場で犯罪行為とも評価できる文書偽造を行い、他方、本件行政との関係でも平然と文書を偽造していることが指摘されているのであり、これらの件からも被告証拠の信用性の無さが決定的に裏付けられる。
第四 終りに
以上、被告の訴訟活動が訴訟法上の信義則に反する違法なものであることを多面的かつ詳細に点検してきたが、改めてその結果を総括すると、被告は、司法手続きにおいてさえ、虚偽の陳述をし、偽証をし、偽造文書を作成して提出することについて誤魔化し切れればよいと考えていると判断せざるを得ず、又、行政との関係においても同様であって、被告が本件において行っている主張立証活動における主張、供述、証言、書証などの信用性は著しく低いと言わざるを得ない。
以 上